「ゲットーを捏造する」で取り上げられていた曲2

「ラップ音楽にみられる暴力的な歌詞が、文字通りのことを意味している場合は滅多にない。むしろそれらはしばしば、マイクをもったライバルに対する挑戦の暗喩である」(p72)
Ice CubeのJackin' For Beats は「他のアーティストやプロデューサーをサンプリングすることを、徹底武装した強盗として描いている」Ice-TのGrand Larcenyは「ショーを強奪するという自慢話」
これはHipHopに慣れてない頃に誤解してた点だった。よく考えたら、社会問題に意識的なコンシャス系と呼ばれたりするアーティストだって、他のラッパーを叩きのめすバトル的な曲はアルバムにいくつか入れてくる。ラップの技術を披露するスタイルの中のひとつなのだろう。

ものすごい数のサンプルが使われてる!

「ゲットーを捏造する」で取り上げられていた曲

「なんと言っても1970年代の幕開けとなったのは、TemptationsのBall Of Confusionで、これはまさに世界―特にゲットー―の状況を的確に描いていた。都市部での反乱や警察・コミュニティ間の暴力は、1970年代を通じ、いくつかの都市では緊張の火種であり続けていた」(p28)
サイケデリック・ソウルと呼ばれていた頃の曲。かっこいい!

天使にラブソングを2」で歌われている。ノリノリのお年寄りに対し、生徒はつまらなそう。

黒人が都市へ、白人が郊外へ移住する状況を、チョコレート色の都市・バニラ色の郊外と表現している。

「ゲットーを捏造する-アメリカにおける都市危機の表象」読書メモ

ゲットーを捏造する―アメリカにおける都市危機の表象

ゲットーを捏造する―アメリカにおける都市危機の表象

著者はこの本で、社会学などの学問が都市の黒人文化に対して、しばしばネガティブな分析(病理・機能不全に起因するなど)を行ってきた点を批判している。そして、捏造された表象の裏にある黒人文化の多様性や、楽しみをもたらすポジティブな価値の意義を強調している。

第一章

従来の社会学による都市の黒人文化に関する著作の問題点は、狭義の文化定義に依拠し、人々の行動と文化を交換可能で同義のものとして扱った事にあると述べている。
(都市黒人文化を単一のものと定義し、言語・音楽・スタイルなどの文化を、病理の表現・人種主義と貧困に対処するための代償・抵抗行動であると関連づけ説明する)

ヒップホップ

ラップに対しても上記の様な視点に基づく解釈がなされる。ひとつは暴力性の表出であり、もうひとつは貧困に対する抵抗の表現であるという見方である。しかしラップにおいては、物語る内容以上にMCの喋りの技量、創造的なユーモア、隠喩や直喩、スラングを飛ばす力量がもたらす快楽が重要である。「黒人音楽、言語の創造性と実験、その身振り、その語り、そのスタイルは、鳩尾から沸き上がる心理的な快楽の源泉としても理解されなければならない。かれらはまた、インナーシティのコミュニティの政治的・社会的世界について考察し言及するけども、表出的文化は単に社会生活や葛藤、病理、不安の表現を反映したものではない」(p76)

Kendrick Lamar「Good Kid, M.A.A.D City」メモ

サンプリング

"Money Trees""Silver Soul" Beach House
"The Recipe""Meet the Frownies" Twin Sister
Beach HouseとTwin Sisterは、どちらもドリーム・ポップというサブ・ジャンルに入るバンドらしい。

「ブルースの魂」続き2

10/スイング

 黒人社会を色濃く反映したブルースと違って、ジャズは黒人が作りだし、やがて白人も含むアメリカ全体を反映した、アメリカ人の音楽となった。ジャズがアメリカ音楽の主流となり、白人スイングバンドが増えるにつれ、黒人演奏者の存在感が薄くなっていった。

[人物メモ]

Paul Whiteman・ODJB・Joe "King" Oliver・Louis Armstrong・Fletcher Henderson・Coleman Hawkins・"Buddy" Bolden・"Jelly Roll" Morton・Bix Beiderbecke

11/叫喚ブルース

 従来のブルースより、リズムやボーカルのシャウトを強調したスタイルが、南西部で見られた。後にリズム・アンド・ブルースと呼ばれる。ラジオを通じて黒人大衆に広く普及した。「もっとも本来的なブルースは、なお変わりなく南部の黒人農民の間に残存した。このブルースを、リズム・アンド・ブルースが通俗化し普及したのである」(p192)

[人物メモ]

Wynonie Harris・Jimmy Witherspoon・Bullmoose Jackson・B. B. King・T-Bone Walker・BoDiddley・'Smokey' Hogg

12/モダン・ジャズと現代のジャズ

 アメリカ音楽の主流となったスイングは、ブルースの伝統を失い、停滞していた。ビバップはそんな状況の中で、スモールバンドで演奏の流動性、ソロの自主性を重視するスタイルとして登場する。当時の社会背景として、世界大戦で貢献したにもかかわらず、アメリカ社会で孤立している黒人の主流文化への反抗意識があったと述べられている。音楽産業においても、黒人演奏者がトップになるのが難しかった。ビバップは当初、評論家などには酷評された。ビバップは次第にアウトサイダー的なスタイルを表す言葉として、若者に流行した。

[ビバップに影響を与えた人物]William "Count" Basie・Lester Willis Young

 「べーシーの影響のもうひとつ重要なものは、リフのソロがもたらした独奏の分野である。べージーのソロイスト―とくにテナー・サックス―は、リフが示すコードを土台として、その上に広げられる長い旋律的ソロを行った」(p203)

[ビバップの特徴]

 「バップ以前のジャズでは、ベース・ドラムが(一小節2または4拍子で)規則的なリズムを刻んだが、ビーバップのドラマーは、シンバルにその役割を移し、ベース・ドラムはときどきアクセントをつけたり、爆発的な強調のために使うことにした。一方、シンバルは軽くきらめく音で、4/4のレガートの感じの表現を受け持つ。さらに弦バスもまた同じ4/4の基礎リズムを刻むことになり、従来には見られなかったリズム・セクションでの重要な役目を受け持つことになった。こうして生まれるシンバルが刻んで、弦バスが応援するレガート的な土台の上に、他の楽器はポリリズムの効果を出すように、アタックをずらしながら旋律線を描くのである。そこへバップのドラマーは、シンバルで4/4拍子を保ちながら、左手では、ハイ・ハット・シンバルやベース・ドラムを打って、いやが上にもポリリズムの複綜を重ねるのだ」(p217)
 「バップは旋律主題に基づいてこれを変奏したり即興演奏したりする従来の常套手段を棄て始め、その代わりに、旋律の基礎にある和音に基づいて変奏し、その結果、全く別の旋律を作り、また時にはもとの旋律の音符を別の和音の根音として対立旋律を作ったりもした」(p218)
 「ピアニストの役目もビーバップによって大変化を蒙る。基礎のリズムをシンバルと(特に)弦バスが引き受けるのだから、バップのピアニストは左手でリズムを刻む必要がなくなり、また右手は以前よりはるかに複雑で流動的な線を描くことができる。更に、ピアノはソロイストにコードを与え、アンサンブルの和声的統一を確立する役割を得る」(p219)

「ブルースの魂」続き

5/ブルースの誕生

 奴隷解放後の黒人社会の変化について述べられている。「黒人の立場は昔のような単純なものではなくなり、不慣れな社会の激しい生存競争の真只中で自立自存の戦いを始めなくてはならない。白人がすでに数世紀間そうやってきたことが、突如として黒人の身にふりかかってきたのだ」(p76)

6/カントリー・ブルースの成立

 余暇や移動の自由による生活体験の拡張と複雑化がブルースという新しい形式に反映された。ブルースの個人的な経験を語る性格も、社会生活の変化が影響している。
 楽器の伴奏を用いる特徴について「ブルースはその最初から、楽器伴奏を考慮していた。ブルース成立の最後的形式である十二小節構成は、三行の歌詞からなり、各行は四小節にわたり、その中の半分が歌詞で残りの二小節は、別人が歌う答え、または楽器の応答にあてられているからである」(p90)
 ブルースを源流とし、西洋の楽器を取り入れ、器楽的な音楽になったのがジャズ。ニューオーリンズ発祥とは限らないが、ジャズ生んだ環境を説明するには妥当な例。マーチング・バンドの楽器をまず取り入れたのはクレオールの人々。他の黒人達も取り入れ始め、自己流に演奏し出す。

7/女性のブルース

 「古典的ブルース」聴衆の前で歌い、報酬をもらう大衆娯楽として成立したブルースを指す。古典的ブルースの土台には、ミンストレル・ショーがあり、ミンストレル団の巡業を通じて広まった。歌詞は黒人以外のより広い聴衆の状況や感情を扱った。Ma RaineyやBessie Smithなど多くの女性歌手が人気を博した。

8/都会ブルースとブギウギ

 世界大戦による労働者需要などから黒人の北部移住が活発化する。南部のブルースが持ち込まれ、都会的なブルースが生まれる。ブギウギは「声楽ブルースに田舎歌手の使ったギター技術を合わせてピアノ化したものといえる」(p134)

9/ジャズ対ブルース

 黒人中産階級についての分析。白人中産階級の生活を志向する彼らは、ブルース・ブギウギなどは下品なものと敬遠した。黒人中産階級の意識とブルースはそぐわなくなっていた。