「ブルースの魂」続き2

10/スイング

 黒人社会を色濃く反映したブルースと違って、ジャズは黒人が作りだし、やがて白人も含むアメリカ全体を反映した、アメリカ人の音楽となった。ジャズがアメリカ音楽の主流となり、白人スイングバンドが増えるにつれ、黒人演奏者の存在感が薄くなっていった。

[人物メモ]

Paul Whiteman・ODJB・Joe "King" Oliver・Louis Armstrong・Fletcher Henderson・Coleman Hawkins・"Buddy" Bolden・"Jelly Roll" Morton・Bix Beiderbecke

11/叫喚ブルース

 従来のブルースより、リズムやボーカルのシャウトを強調したスタイルが、南西部で見られた。後にリズム・アンド・ブルースと呼ばれる。ラジオを通じて黒人大衆に広く普及した。「もっとも本来的なブルースは、なお変わりなく南部の黒人農民の間に残存した。このブルースを、リズム・アンド・ブルースが通俗化し普及したのである」(p192)

[人物メモ]

Wynonie Harris・Jimmy Witherspoon・Bullmoose Jackson・B. B. King・T-Bone Walker・BoDiddley・'Smokey' Hogg

12/モダン・ジャズと現代のジャズ

 アメリカ音楽の主流となったスイングは、ブルースの伝統を失い、停滞していた。ビバップはそんな状況の中で、スモールバンドで演奏の流動性、ソロの自主性を重視するスタイルとして登場する。当時の社会背景として、世界大戦で貢献したにもかかわらず、アメリカ社会で孤立している黒人の主流文化への反抗意識があったと述べられている。音楽産業においても、黒人演奏者がトップになるのが難しかった。ビバップは当初、評論家などには酷評された。ビバップは次第にアウトサイダー的なスタイルを表す言葉として、若者に流行した。

[ビバップに影響を与えた人物]William "Count" Basie・Lester Willis Young

 「べーシーの影響のもうひとつ重要なものは、リフのソロがもたらした独奏の分野である。べージーのソロイスト―とくにテナー・サックス―は、リフが示すコードを土台として、その上に広げられる長い旋律的ソロを行った」(p203)

[ビバップの特徴]

 「バップ以前のジャズでは、ベース・ドラムが(一小節2または4拍子で)規則的なリズムを刻んだが、ビーバップのドラマーは、シンバルにその役割を移し、ベース・ドラムはときどきアクセントをつけたり、爆発的な強調のために使うことにした。一方、シンバルは軽くきらめく音で、4/4のレガートの感じの表現を受け持つ。さらに弦バスもまた同じ4/4の基礎リズムを刻むことになり、従来には見られなかったリズム・セクションでの重要な役目を受け持つことになった。こうして生まれるシンバルが刻んで、弦バスが応援するレガート的な土台の上に、他の楽器はポリリズムの効果を出すように、アタックをずらしながら旋律線を描くのである。そこへバップのドラマーは、シンバルで4/4拍子を保ちながら、左手では、ハイ・ハット・シンバルやベース・ドラムを打って、いやが上にもポリリズムの複綜を重ねるのだ」(p217)
 「バップは旋律主題に基づいてこれを変奏したり即興演奏したりする従来の常套手段を棄て始め、その代わりに、旋律の基礎にある和音に基づいて変奏し、その結果、全く別の旋律を作り、また時にはもとの旋律の音符を別の和音の根音として対立旋律を作ったりもした」(p218)
 「ピアニストの役目もビーバップによって大変化を蒙る。基礎のリズムをシンバルと(特に)弦バスが引き受けるのだから、バップのピアニストは左手でリズムを刻む必要がなくなり、また右手は以前よりはるかに複雑で流動的な線を描くことができる。更に、ピアノはソロイストにコードを与え、アンサンブルの和声的統一を確立する役割を得る」(p219)