リロイ・ジョーンズ「ブルースの魂」読書メモ

借りて読んだのがこれ。

新しい翻訳も出ている。

1/新世界と奴隷

 宗教・言語・慣習が全く違う環境に置かれ、そこに適応させられた人々の複雑な心理が、アフリカン・アメリカンの音楽の誕生・変遷にも影響を与えているという。「このアメリカ文化の重圧の下で、アフリカ文化が保持され、変形され、アメリカ黒人という新しい人種が生まれるのであるが、その文化変容の過程が、アフリカ音楽からアメリカ黒人という新しい音楽がつくられるという《音楽》の分野において、最も典型的に行われたのだ」(p21,22)

2/アメリカ南部の奴隷

 カリブ海地域に比べ、アメリカでは小農園が多く、白人と奴隷の距離も密接であったため、文化順応が進んだ。数世代経つと、彼らのアフリカ伝統は消え始め、アメリカ黒人という集団に変わってゆく。ただ、宗教・音楽・ダンスは形を持たない、精神的文化に属するものであったため、根絶されず何らかの形で受け継がれてきた。

3/ワーク・ソング

 アメリカ黒人が生んだ、アメリカの民俗音楽であるブルーズは、労働歌(ワーク・ソング)を源流とする。ワーク・ソングはアフリカの労働歌と形式に共通点があるが、歌われる内容はアメリカでの体験が反映されたものであった。彼らはアフリカのリズム、言語のアクセント、音階、コール・アンド・レスポンスといった特徴を保持した。この特徴はブルーズ・ジャズなど、その後の音楽にも受け継がれる。

4/黒人霊歌

 黒人のキリスト教信仰は19世紀以前から始まっており、19世紀に入ると、白人の布教運動によりさらに広まってゆく。特にメソジスト・パブテスト派になる者が多かった。黒人教会は、彼らの社交の中心であり、唯一感情を心から表せる場であった。黒人霊歌は、アフリカの祭儀舞踊と儀式の歌に見られる熱狂的な要素を持ち込んだ。